Books

スポンサーリンク


Book of Today #7 大人の流儀 / 伊集院静

伊集院静 時間が解決してくれます。だから、生き続ける。そうすれば亡くなった人の笑顔を見る時が必ずきます…この言葉に静かな動揺

昨年の「海辺のライブラリー」で薦められたこの本に心打たれて

色々な方とお喋りしたりしていると、色々ためになることも多いんです。身近な話題から、ちょっとした相談、手に入れた機器のTips自慢、そしてなによりも本の話題。

「この本、最近で読み終えて、とっても良かったんです」
と手渡されて、チェアに座りページをめくる私の目に入ってきたのが次の文章(長いですが引用させていただきます)。

人間の死というものは残ったものに大きなものを与えます
特に親しい人の死はどこか自分の力が足らずに死なせてしまった悔やんでる人は多いはずです。私もずっとその気持ちは消えません。それに親しい人の死は思わぬ時によみがえって人を狼狽させます。死んでしまっているのだから片づいてもよさそうですが、死ですら片づかないのですから困ったものです。

親しい方を亡くされて戸惑っている方は多いでしょう。私の経験では。時間が解決してくれます。

だから、生き続ける。そうすれば亡くなった人の笑顔を見る時が必ずきます。

伊集院さんって名前はよく聞くけど真剣に読むのは初めてだっただけに、少し動揺してしまいました。短い期間の肉親の死に、いまだに心の折り合いをつけられていない時に、このように言ってもらえたらどんなに良かったのだろか…。残された自分がどう向かうかを静かに伝えてくれます

 

0 コメント

Book of Today #6 青べか物語 / 山本周五郎

作者が愛した美しい沖の百万坪を埋めたてた、その上に住みツクラレタ街並みを美しいと思い日々快適さや便利さを享受してきた私たちにできること

浦安人として必ず読んでおくべき本として、
長い間宿題になっていた本でした

想像以上にエロく生々しい箇所が多かったが、そこに描かれた人々は、どんなときもサバサバと明るく強く、また登場する作者自身の立ち位置も絶妙で、かつての浦安を知るという目的を置いても、読み物としてとても面白かった。

 
で、本題は最後の章。 
30年後、再び沖の百万坪と呼ばれたこの地を訪れた作者が目にしたものとは、

これが広い荒地の中に、澄んだ水を湛えていた
あの一つ入だろうか

日本人は自分の手で国土をぶち壊し、汚職させ廃滅させて

(中略)

日本人とは昔からこういう民族だったのだ。 
すべてが常に殆ど無計画であり、そのときばったりで、 
木を伐り、山を崩し、堀を埋め、土地を荒廃させながら 
今日までやってきたのである。

こんなにしてしまった国土を、 
あとから来る若い世代の人たちに譲ることの恥ずかしさに、 
深く頭を垂れるおもいだった。

山本周五郎がこう憂いた昭和30年代から今日まで 私たちは変われているのだろうか?

作者が愛した美しい沖の百万坪を埋めたてた、まさにその上に住み、 ツクラレタ街並みを美しいと思い、日々快適さや便利さを享受してきた私。深く頭を垂れるおもいで読み終えました

0 コメント

Book of Today #5 TOKYO BAY / 野寺治孝

一瞬ごとに変わっていくものや とどめて置けないこのときを残すためには空と海面だけが必要だった

浦安市出身の写真家、野寺治孝氏が浦安千鳥の岸壁から撮り続けた 
東京湾の写真集「TOKYO BAY」(1996年出版)
 
この写真に初めて出逢ったのは、1995年 舞浜のホテルでの写真展。 
確か会社の帰りに舞浜で下車して一人で観に行ったのだと思う。 
その時は、正直ちょっとびっくりした。

想像したものとぜんぜん違っていたから。

そこが東京湾だと特定できるような船やビル郡だとかは一切ないのだ。 42枚の写真、そのすべてに写っていたものは、ただ空と海面だけだった。

それから1年後、 
都内の書店で写真集となった「TOKYO BAY」と再会した。普段、写真集なんてよほど気に入らないと買わない私だったけれど、なんとなく気になり購入して帰った。

そして、今、 
彼が撮りたかったもの、焼き付けたかったものが、やっとわかる気がする。

空のいろ 
波のきらめき 
一瞬ごとに変わっていくもの 
とどめて置けないこのとき

”時が移ろい行く切なさ” 
そんなストリーがある一冊の写真集です。海辺のライブラリーで手に取ってみてください

 

0 コメント

Book of Today #4 男の隠れ家4月号

一件の本屋を訪れることだけを目的に電車を乗り継ぐ一日も良いかも

そんな高揚感を感じる魅力的な本屋たちの紹介からスタート
『男の隠れ家 4月号』

普段は旅についての特集が多い印象の雑誌ですが、今回は"本"をキーワードにあまり知られない書店の歴史をなぞるコラムなどなど、相変わらす程よく濃厚に掘り下げていきます。

ブックカフェ&ライブラリーバー
『本をツールにしてつながる』海辺のライブラリーとしては、会話をはずませるアイテムとしてや、空間のエッセンスとして上手に本を使う店を特集したPart4の記事『本と酒と珈琲のある空間』が、実に興味深いところ。

本に登場する食事シーンを肴のヒントとする長屋の酒場
世界を旅する架空の人物X氏の書庫の設定で書棚をディスプレイ
食事のメニューの最後にスタッフおすすめのブックメニューのページ
本を持ち寄りボトルキープならぬ本棚キープができるバー・・・

誰かがすすめる本の一節に思いがけず共感してしまった瞬間は、気の合う友人と出会ったかのように心踊るもの。たくさんの可能性を秘めていてドラマチック、そしてまたそのビジュアル自体も美しい"本"。そんな本という存在感に魅せられた人々の情熱と工夫がひしひしと伝わる、本好きにはたまらない記事です。

海辺のライブラリーも『本ってほんとうにいろんな出会いのスタートになるパワーがあるよね』と思っていただけるような場にしたいですね。

そして、代官山の気のなるあそこも、そろそろ行かないとネ!

0 コメント

Book of Today #3 花いくさ / 鬼塚忠

何気なく使っている言葉「花を”生ける”」その本意をしみじみ思う

浦安を舞台にした家族再生の物語、映画『カルテット!』
もうご覧になりましたか?

原作者の鬼塚忠さんには、この海辺のライブラリーにもご参加いただいたり、多くの作家のエージェントをされているお仕事柄たくさんのお薦めの本を寄贈していただいたり、私たちの活動の頼もしい応援団のおひとりになっていただいています。

その鬼塚さんの新作『花いくさ』
初の時代小説ということでどんな世界観なのか。想像がつかないなか手にとってみれば、グイグイと軽やかに読み進んでしまう鬼塚さんならではのいつものリズム感。それは戦国の世の突き動かされるようなスピード感とオーバーラップ。一方、主人公の華人“池坊専好”をとりまく美を追求する人々や花の描写はしっとり寄り添うように丁寧にゆっくりと。

まさに二つの美の世界の対比とでもいうようなリズム感の文体に導かれて、あっと言う間に引き込まれてしまいます。そして、普段何気なく使っている、花を「生ける」という言葉の本意をしみじみとかみしめながら、最後はもちろん誰もが涙の結末です。

そしておまけの逸話
この『花いくさ』。個人的には「海辺のライブラリー参加してて良かった~!」というおまけの逸話もありなんです。本好きだったらきっとうらやましがるに違いない海辺のライブラリーメンバーの自慢話はこちらです

ちょっと自慢...
http://sumijunko.typepad.jp/blog/2012/02/29.html

 

0 コメント

Books of Today #2 これだけは、村上さんに言っておこう / 村上春樹

世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける330の質問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?...からの面白い話

といっても、そんなに時間をかけてじっくりというワケには
いかないので
、ぱっと開いたところを公園で...

物理の本が難しいという質問に対しての答え、

僕が小説でやっているのは、専門用語を使わずに普通の言葉を組み合わせた物語のユニットを、記号的に扱うということです。これなら何も覚えなくていいから、わかりやすいですね。ジャズでいうと、モード理論に似ているかもしれません

なるほど、色々参考になるなぁ...と感心してしまいます。「直ちに健康に被害はない」なんて馬鹿なことを何度も繰り返し聞いてきていたので、とても新鮮に聞えますね。もう少し時間があったので次の質問。タイトルは、怒りっぽい妻。その内容は

...自分で言うのもなんですが、夫はやさしいし。家事もどんどんやるし、素敵な人だと思います。なのに近頃は、夫のすることなすこと気に入らず、私はぷんぷんしています。なぜ私はこんなに悪い態度をとるのかと思うと、情けなくて...

で、その回答は

こんにちは。非常に短い答えになりますが、女の人ってみんなそういうのもです。だから気にしないでいいんじゃないでしょうか

うまくするりと回答してしまっているのか、うん、それが真理なのね、と考えるかは受取り側の話。あっ、いえ、この話ワガヤのことではないのであしからず...ハハハ(爆)。長い間夫婦生活を続けていると、穏やかな時間となんとなく緊張感漂うことも多くて、いいんだか、悪いんだか...

0 コメント

Books of Today #1 ランゲルハンス島の午後 / 村上春樹

雲の動きをじっと待っているとどんな音が聞こえるかな?

ささやかな生活のコツ
BLOGやFacebookを続けていると、いや、日常の生活の中でモノゴト(たまにはうっとうしくも、時折心が晴れる)でもそうなんだけど、見たモノにインスパイアされて文章を書き写真を選択するのか、写真を選択してから文章を書くのか少し悩んだりもします。この『ランゲルハンス島の午後』は村上春樹さんが基本的に文章を書き、安西水丸さんに手紙で送りイラストを描くことの繰り返しのようです。私は、その逆かなと思っていましたが、それほどまでに文章(手紙)とイラスト(挿絵)の関係が、古い友情や別れたけど未だに続いている男女の関係のように思えてなりません。

町で本を読みたいと思ったときは、なんといっても午後のレストランがいちばんだ。静かで、明るくて、すいていて、椅子の座り心地が良い店をひとつ確保しておく。ワインと軽い前菜だけでも嫌な顔をしない親切な店が良い…

海辺のライブラリーのひとつのテーマ、ライブラリーもこうしたささやかな生活のコツになればいいなぁ…とフト思いながら、ページをめくってます。思いがけず手にした本をきっかけに初めてあったような人との短い会話。それは小さいなりにあとになって意外と心に残っているのかもしれません。

ところで、『ランゲルハンス島』ってどこにある島だと思いますか?
私もてっきりアラスカあたりの小さな島だと思い込んでいましたが、Wikipediaを調べてみると《膵臓の中でグルカゴンを分泌するα細胞(A細胞)、血糖量を低下させるホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞(B細胞)、ソマトスタチンを分泌するδ細胞(D細胞)および膵ポリペプチドを分泌するPP細胞の4種の細胞からなる細胞塊である》とありました。ほかでもない私たちの体の中にあったんですね。そういう意味も分かると、この本の深い部分をも知りえるのではないかと思いはじめてます。

 

0 コメント